コロナ禍の1年をクリニックIT化の1年に 計画以上に進むカルテのペーパーレス化
成功の決め手は、カンタン、リーダー、ひとり一台。
大阪と京都の中間地点に位置する大阪府茨木市は、両都市へのアクセスも良く、最近では大学キャンパスの移転に伴い文教地区としても人気のある地域です。
ここに開業して10年になる「くらとみ歯科クリニック」(チェア5台、スタッフ11名=歯科医師2名、衛生士・助手9名)は、小児から高齢者まで幅広い年代層から支持されている郊外型総合歯科です。
Dental eNote®で紙カルテを院内から一掃した「くらとみ歯科」のペーパーレス化の経緯と現状について、蔵富 康浩院長、Dental eNote®のスタッフリーダーの麻森氏、川上氏にお話を伺います。
2020年4月、新型コロナによる最初の緊急事態宣言を受け、同院でも密を避けるために診療時間短縮・予約数削減等の対策を取っていました。
「(その影響で)時間ができたので、コンサルティングの先生に医院の中の改革について相談した。最初に相談したのはネット環境の整備だったが、カルテも多くてしまうのに苦労していることにも触れた」(院長)
2010年に開業して10年、カルテは5000を超えており、長く通院する患者が多く分厚くなる傾向がありました。院内の天井まで届く大容量のカルテ棚では収まらず、通路の高い位置に据付けられた棚にもカルテがぎっしり並んでいました。
ちょうど予約システムの更新時期でもあり、コンサルタントから
①ネットワークの改修
②予約システムの更新に合わせ
③カルテを「Dental eNote®」でペーパーレス化する
という案が提示された。
院長の決断は素早く、「すぐに、ネットワーク環境の整備と、Dental eNote®でカルテのペーパレス化に取り組む。この1年でIT化できるものは全てやる、と決めた」(院長)と当時を振り返ります。
スタッフリーダーの決定
まず最初に、アシスタントの川上氏・麻森氏をリーダーに任命しました。
「ICTを進める中でスタッフの協力が必要だと考え、" 院内スタッフのリーダーとして先頭に立ってやってほしい " と依頼した。実はこれまでも様々なシステムを導入しようとしたことはあった。しかし新しいことを(院長が)ひとりで初めてしまい、途中でストップしてしまうことが何度かあった。今回はスタッフ内にリーダーを置いたこともありスムースに進めることができた」(院長)
Dental eNote®を最初に見た時、川上氏・麻森氏は具体的に業務のひとつひとつについて
「これはできるか、あれはできるか」と多くの質問をしながら「第一印象としては、便利だなぁと思った」といいます。
Dental eNote®への移行準備
予約システムに入れられない情報をDental eNote®のカルテに持ってくることにし、まずは受付システムの更新に合わせて項目を精査しました。
項目を作業する工程は、Dental eNote®導入を支援する歯科専門のコンサルタントがスタッフから聞き取る形で、予約システムについては川上氏・麻森氏が中心となり、衛生士業務、ドクター業務に関わる部分は直接現場の意見を反映しながら、それぞれが連携して進めやすいように整理しました。
「A4のカルテだと、ページをめくらないといけない。Dental eNote®導入以降来院し始めた患者さんは、新しく1枚の大きな紙に複数ページが張り付いているようなカルテにした」
「保険証の記録、薬や身体的な特長、血圧など必ず残しておかないといけない項目など、医師や衛生士が共有する必要のある情報を並べてあり、大きな紙のどのあたりにどんな情報があるかはわかっているので、そこをピンチアウトして見られる」(院長)
院内テンプレートの作成
既存の紙カルテをPDFにして取り込んで利用するだけでもペーパーレスは実現できますが、例えば日付はカレンダーから選べるようにしたり、担当者名はリストにして選ぶだけにしたり、スタンプを画面上にポンと押せるようにしたり、フォーム化することでカルテの記入効率は格段に上がります。
また、カルテを中心に連携して治療にあたるので、見やすいカルテを作ることは重要ですが、Dental eNote®なら誰が書いても整ったカルテを作成することができます。
問診票やサブカルテなど、従来であれば印刷したり原本をコピーして使用していたようなものは、すべてDental eNote®のテンプレート(フォーム)としてすぐに取り出して使えるようにしました。
同院にある約30のテンプレートの作成・カスタマイズは前出のコンサルタントが担当しましたが、現在はほとんどのテンプレートを院内(川上氏・麻森氏)でカスタマイズしています。
過去カルテのスキャン
5000を超えるカルテのスキャンに2ヶ月、手間も時間もかかりましたが、すべてのカルテをDental eNoteに取り込みました。
日常使用しないカルテは倉庫保管ができるようになったため、院内の保管場所はカラになりました。
なくなったのは紙カルテだけではありません。
「以前は午前中に昨日診療分のカルテを片付け、午後に翌日診療予約分のカルテを出していた。1日30-40人くらいの患者さんが来院するので、中身のチェック含めてカルテの準備にトータルで1時間くらいかかっていたが、この作業がなくなって受付業務がかなり簡素化された。現在は、その日の診療予約分のカルテをDental eNoteに読み込んでおく程度で、当日朝で十分になった」(麻森氏)
「以前は番号順に整理していた。(カルテの背中に数字がわかるよう色分けするなど工夫していたが)電話をとったのが受付でなかったりすると、慣れていなので探すこと自体が大変だった」(院長)
「個室診療なので、これまでは次の部屋の担当に受け渡しする必要があった。ドクターの診察から次の処置に移動する度にカルテも移動(引継ぎ)する必要があったが、それがなくなった」(川上氏)
出したカルテはしまう必要がある。「カルテの紛失がなくなった。正しい場所に返せていない場合、インカムで聞いたり、ひたすら探すしかないので、回数は多くないが、起こったときは本当に大変だった」(麻森氏)
2021年3月、Dental eNoteでの診療が始まりました。
「デジタル機器が苦手な人は1-2名いたが、『習うより慣れろ』と強制的に進めた。院内全体が慣れるまでに1ヶ月かからなかった感じ。今はもう大丈夫」(川上氏)
「iPadとペンは、普通の紙とペンと変わらない。消したりするのも、スマホが使えるならできるというレベル。Dental eNoteの操作も、囲んで消すなど視覚的にわかりやすいので、本当に抵抗なく、書いたり消したりするようになるのにほとんど時間はかからなかった」(院長)
「カルテに続いて、医内のマニュアルなど紙ベースのものを徐々に改良していけると良いと考えていたが、Dental eNoteの活用は計画以上に進んでいる。簡単に書類が作れるので、患者さんに配る資料が充実してきた」(院長)
「丁寧なカウンセリングに時間が取れるようになった。資料が欲しいけど時間が取れなくて端折っていたような資料作りや、患者さんのデータの作成が丁寧にできるようになった」(麻森氏)
「みんながiPadに慣れてくると、新しい動きに対するみんなの反応が良くなってきた。ここ半年くらい前向きになってきたと感じる。リーダーのふたりには直接話すので動いてくれるのは当然だが、他のスタッフも「このiPad使ってやること」だったら、苦でなくなっていて、入り込みやすくなっている。例えば、LINEを受付に使うことなどを検討し始めているが、取り組むのに受け入れ方が早い。以前は、始めるけど、いつの間にかフェードアウトしたり、苦手、と言って手をつけない人もいたが、頑張ってくれるようになった」(院長)
「ひとり一台iPadがあるので、やりませんと言えない状況。全員がチェックするようになっていたりするので、ちゃんとせざるを得ない」(麻森氏)
くらとみ歯科には、10人のスタッフがおり、毎日7-8人が交代で出勤する体制です。
出勤人数分のデバイスでも運用は可能ですが、
「ひとり1台(自分用の)iPad体制とすることで、業務(カルテ)以外でもDental eNoteを使用することが増えている。マニュアルや、受付の入金表とか、技工物のスケジュール管理など、今まで紙でやっていたものを全てDental eNoteに移行している。紙と同じように使えるし、間違わないので、負担なく始められた」
「現在ではミーティングもすべてDental eNoteで当たり前のようにノートをとっている。付箋をつけて『あとでみんなに共有しておきますね』がなくなった」(院長)
と、1人1台の効果を感じている。
院長・リーダーが先頭に立ち、Dental eNote®によるカルテのペーパーレス化を通して、院内スタッフ全員に「iPadを使ってやることならできる」という土壌が整ったくらとみ歯科のICT化は、これからも力強く推進されるでしょう。
MetaMoJiは、今後もDental eNote®で歯科医院様の業務のICT化をサポートしてまいります。
(2021年9月取材)